ぶっちゃけ、「類推思考」に頼るというのは「宿題を写す」ようなものだ。
考えてみてほしい。私たちは普段どうやって問題を解決しているだろうか?ほとんどの場合、他の人がどうしているかを見て、それに倣い、せいぜい細部を少し変える程度だ。例えば、レストランを開きたいとしよう。あなたは繁盛しているレストランを視察しに行き、その内装、メニュー、価格設定を学ぶかもしれない。これが類推だ。
こうすることの利点は、手間がかからず、安全で、大きな間違いを犯しにくいことだ。なぜなら、あなたはすでに他の人が検証済みの道を歩んでいるからだ。
しかし、イーロン・マスクは、このやり方の致命的な欠点は、決して破壊的なものを生み出すことはできないことだと考えている。せいぜい「少しだけ良い」コピーしか作れない。なぜなら、あなたは他人の思考フレームワークや限界まで丸ごとコピーしてしまうからだ。あなたはただ微細な改良をしているに過ぎず、真のイノベーションではないのだ。
一方、マスクが提唱する「第一原理」の思考方法は全く逆だ。それは「他の人はどうしているのか?」と問うのではなく、「このことの本質は何なのか?」、「私たちが確信できる最も基本的な事実は何か?」と問うのだ。
彼自身の例を挙げよう。 当時、誰もがバッテリーパックは非常に高価だと考えており、それは今後も長い間変わらないだろうと信じていた。これは当時の市場におけるバッテリー価格からの「類推」による結論だった。
しかし、マスクは第一原理で考えた。
- バッテリーパックは何で構成されているのか?彼はバッテリーを最も基本的な材料レベルまで分解した。炭素、ニッケル、コバルト、アルミニウム、鋼などだ。
- これらの原材料は公開市場(例えばロンドン金属取引所)でいくらなのか?
- 彼はこれらの原材料の価格を合計し、そのコストが、当時市販されていた完成品のバッテリーパックよりもはるかに低いことを発見した。
結論はこうだ。原材料のコストがこれほど低いのであれば、その間の莫大な価格差は、製造工程の非効率性に起因しているに違いない。そこで、彼は既存の高価なバッテリーを購入するのではなく、自ら原材料を調達して工場を建設し生産することを決意した。結果として、コストを大幅に削減したのだ。
ロケット製造も同様だ。他のロケットは使い捨てだったが、彼は分析した。ロケットの燃料費は総コストのごく一部に過ぎず、本当に高価なのはロケット本体であると。ならば、なぜ飛行機のように燃料を満タンにして再利用できないのか?こうして再利用可能なファルコンロケットが誕生した。
だから、マスクが類推に頼ることを避けるよう強調するのは、次の理由からだ。 類推は他人の地図の上で道を探させるが、第一原理はあなた自身に全く新しい地図を描かせる。
前者はあなたを優れた追随者にするが、後者こそが、あなたをルールを変える者にする可能性がある。彼のように「世界を変える」レベルのことを成し遂げようとする人間にとって、「宿題を写す」だけでは到底足りないのだ。