創業過程において、なぜ第一原理が機会発見に役立つのでしょうか?

直樹 淳
直樹 淳
Researcher in AI, uses first principles for novel designs.

例えるなら、料理を作るようなものです。

ほとんどの人が起業する際、それは「レシピ通りに料理を作る」ようなものです。彼らは市場で成功している企業が何をしているかを見て、それを模倣し、せいぜい「彼より少し安い」「彼より機能が一つ多い」「私のインターフェースの方が美しい」といった細部を少し変えるだけです。これは「類推思考」と呼ばれ、皆が同じ鍋で料理を作り、誰がより良い火加減で、誰がより特別な調味料を使うかを競います。しかし、これでは破壊的なものを生み出すのは難しく、競争は非常に激しく、私たちがよく言う「内巻」(過度な内部競争)の状態になります。

一方、「第一原理」とは、レシピを捨てて、「油、塩、砂糖、酢、タンパク質、炭水化物」といった最も基本的な要素、そしてそれらが高温でどのような化学反応を起こすかを直接研究することです。あなたはもはや「この料理をどう作るか」ではなく、「お腹を満たせて、しかも美味しいものを作りたい。手元にどんな基本的な材料があるか?それらをどう組み合わせられるか?」と考えるのです。

このように考えるとき、あなたは既存の「レシピ」に縛られることはありません。

古典的な例を挙げましょう。イーロン・マスクがロケットを作ろうとした時のことです。

  • 「レシピ通り」に考える(類推思考):彼はアメリカやロシアのロケットを研究し、ロケット1機を製造するのに数千万ドル、あるいは数億ドルかかることを知ります。そして「何とかしてコストを10%削減し、もっと安いロケットを作れないか?」と考えるでしょう。しかし、それでも非常に高価です。
  • 「第一原理」で考える:彼は問いかけます。「ロケットの本質とは何か?」と。それを分解すると、金属(アルミニウム合金)、燃料、いくつかの電子部品の塊です。彼はロンドン金属取引所でこれらの原材料の価格を調べ、ロケットを部品に分解して売った場合のコストが、ロケット打ち上げ費用の約2%に過ぎないことを発見しました。

そこで疑問が湧きます。「なぜこんなに高価なのか?」と。彼は、その核心的な理由が、ロケットが使い捨てであり、一度使ったら捨てられることにあると気づきました。これは、あなたが北京から上海へ飛行機で移動し、着陸後に航空会社がそのボーイング747を廃棄するようなものです。その場合、あなたの航空券代はいくらになるでしょうか?間違いなく天文学的な数字になるでしょう。

だから、チャンスは一気に明確になりました。もしロケットを回収し、再利用できれば、コストを元の数パーセントにまで削減できると。

ご覧の通り、このチャンスは他者と「価格を比較する」「機能を比較する」ことで見つけられたものではありません。物事の本質に立ち返り、誰もが当然だと思っていた「ロケットは使い捨てである」という前提を打ち破ることで、全く新しい分野を切り開いたのです。

私たちの日常の起業においても同じです。例えば、ライドシェアが登場する前はこうでした。

  • 類推思考:移動市場に参入したいなら、タクシー会社を設立し、たくさんの車を購入し、多くの運転手を雇い、既存のタクシー会社と顧客を奪い合うことになるでしょう。
  • 第一原理思考:移動の本質とは何か?それは「A地点からB地点へ人を運ぶ」というニーズです。このニーズを満たすのは、必ず「タクシー」でなければならないのでしょうか?そうではありません。どんな「使われていない車」と「空き時間のある人」でも可能です。この二つの最も基本的な要素を再結合することで、ライドシェアのモデルが誕生しました。

要するに、第一原理とは、あなたを「テーブルをひっくり返す」ことができる武器なのです。皆がテーブルを囲んでトランプをし、手札をどう出すか考えている時に、それはあなたに新しいテーブルを直接作り、自分でゲームのルールを決める機会を与えます。これにより、当然ながら、他者には見えない巨大なチャンスが満ち溢れているのです。