この話は、例えるなら「田舎の若者が都会に出てきて、まず良い仕事を見つけ、家や車を買い、最終的に投資をして事業を拡大していく」という物語をスケールアップしたものです。
Googleの発展の歴史は、以下のステップで捉えることができます。
ステップ1:超巨大な「打ち出の小槌」を見つける
Googleは当初、検索エンジンとしてスタートしました。当時のどの競合よりも速く、正確に検索できる優れたものでした。しかし、技術だけでは食べていけません。
真の転換点は、彼らが**Google AdWords(現在のGoogle Ads)**を開発したことでした。これはまさに天才的な発明です。簡単に言えば、「関連する検索結果の上位にあなたの製品情報を表示したいですか?では、お金を払ってください。ユーザーがあなたのリンクをクリックした場合にのみ料金をいただきます」というものです。
このモデルは瞬く間に大ヒットしました。広告主にとっては、費用対効果が明確で、効果が一目瞭然だからです。Googleにとっては、世界で最も賑やかなデジタル交差点で通行料を徴収するようなもので、絶え間ないキャッシュフローを生み出しました。
この「打ち出の小槌」が、その後のすべての物語の基礎となりました。これがなければ、Googleは単なる技術的に優れた普通の会社だったでしょう。
ステップ2:稼いだお金で、深く広い「堀」を築く
お金ができたら、自分の縄張りを固める必要があります。Googleは、ユーザーが何もないところからインターネットにアクセスするわけではなく、何らかの「入り口」を通ることに気づきました。そこでGoogleは、入り口の確保に猛烈に力を入れ始めました。
- PCの入り口: Chromeブラウザをリリース。私のブラウザを使えば、当然私の検索エンジンを使う可能性が高まります。徐々にChromeはIEなどの老舗ブラウザを追い抜いていきました。
- スマートフォンの入り口: Android(アンドロイド)OSを開発。これは非常に強力な一手で、モバイル時代を直接支配しました。Appleを除けば、世界のほとんどの携帯電話メーカーがAndroidを使用しています。スマートフォンにはGoogle検索、Googleマップ、Gmailがプリインストールされており、もはや逃れることはできません。
- 動画の入り口: YouTubeを買収。彼らは動画が将来の主流コンテンツになると早くから見抜き、当時最大の動画サイトを迷わず買収しました。現在、YouTube自体が世界で2番目に大きな検索エンジンです。
この一連の組み合わせ技により、Googleのサービスはインターネットの水道や電気のような存在となり、避けて通ることは困難になりました。
ステップ3:「水道・電気」インフラを利用して、多角的に展開する
検索、Android、YouTubeといった巨大な事業を支えるため、Googleは世界最高峰のデータセンターとサーバーネットワークを構築しました。これらの強力な「インフラ」が遊んでいるのはもったいないと、彼らはその上に「家を建てる」ように事業を展開し始めました。
- Gmail: 無料で使いやすいメールサービスで、人々を従来のメールから解放しました。
- Google Maps: 私たちの移動方法を変えた地図サービス。
- Google Docs/Drive: オンラインオフィスとクラウドストレージで、いつでもどこでも仕事ができるようにしました。
これらの製品の多くは無料で、直接的な収益を第一の目標とはしていません。それらの核となる役割は以下の通りです。
- ユーザーの定着率を高める: 私の「ファミリーパック」を使えば、生活や仕事がそれなしでは成り立たなくなり、他社に乗り換えるのが難しくなります。これが「エコシステム」と呼ばれるものです。
- より多くのデータを収集する: ユーザーについて知れば知るほど、広告のターゲティング精度が向上し、あの「打ち出の小槌」の効率がさらに高まります。
ステップ4:お金が余りすぎて、「未来に投資」を始める
本業が盤石で、お金が使い切れないほどになったとき、Googleは一見「本業とは関係ない」SFのようなプロジェクト、いわゆる「ムーンショット」(月面着陸計画)に取り組み始めました。
例えば:
- Waymo: 自動運転車を開発。
- Verily: 生命科学を研究し、私たちがより健康に生きる方法を模索。
- Calico: 老化対策に特化した研究。
これらのプロジェクトはリスクが非常に高く、莫大な費用がかかり、短期的には全く収益を上げることはできません。しかしGoogleは、そのうちの1つでも成功すれば、「検索」のような偉大な新時代を切り開き、もう一つのGoogleを再構築できる可能性があると賭けているのです。
最終ステップ:Alphabetに再編し、帳簿をより明確にする
2015年になると、Googleの事業はあまりにも多岐にわたっていました。収益性の高い広告事業と、これらの莫大な費用がかかる「未来のプロジェクト」が同じ財務諸表に混在しているため、投資家は不安を感じていました。
そこで彼らは大規模な再編を行い、**Alphabet(アルファベット)**という持株会社を設立しました。
- Google(グーグル)自体はAlphabet傘下の最大の事業会社となり、検索、広告、Android、YouTubeなどの成熟した収益性の高いコア事業に特化しました。引き続き「キャッシュカウ」としての役割を果たします。
- 一方、Waymo、Verilyなどの費用のかかる未来のプロジェクトは、それぞれ独立してAlphabet傘下の他の事業会社となりました。
これによるメリットは明らかです。
- 財務の明確化: 投資家は、Googleというキャッシュカウが依然として好調であることを明確に把握できます。また、新規事業の損失が本業の素晴らしい財務報告を直接「汚染」することもありません。
- 経営の独立性: 各「ムーンショットプロジェクト」は独立したスタートアップ企業のように、独自のCEOを持ち、グループ全体の業績プレッシャーを背負うことなく、より自由に挑戦できます。
したがって、GoogleからAlphabetへの移行は、本質的に「一つのスーパー製品を徹底的に作り込む」ことから、「その製品で稼いだお金を使って入り口を支配し、エコシステムを構築する」、そして最終的に「エコシステムで稼いだお金を使って、より壮大な未来に賭ける」という進化の過程なのです。