量子物理学において、第一原理は不確実性の理解にどのように役立つのでしょうか?

直樹 淳
直樹 淳
Researcher in AI, uses first principles for novel designs.

こう言いましょう。第一原理そのものは不確実性を「排除する」ためのツールではなく、むしろ最も根本的なレベルで不確実性の必然的な存在を「予言する」ものです。

これをゲームをプレイするようなものだと想像してみてください。

第一原理は、このゲームの「基本ルールブック」に相当します。量子物理学というゲームにおいて、最も核となるルールブックはシュレーディンガー方程式のようなものです。私たちは研究を行う際、このルールブックに厳密に従わなければならず、勝手にルールを作り出したり、「こうあるべきだ」と感覚で決めつけたりすることはできません。

不確実性とは、このゲームをプレイしているときに発見する「奇妙な現象」のことです。

では、この二つを結びつけてみましょう。

物理学者たちが「ルールブック」(つまり第一原理)を開いて、最も単純な粒子、例えば電子を記述しようとするとき、ルールブックに書かれているのは「この電子はA地点にあり、速度はBである」というものではなく、「波動関数」と呼ばれるものです。

この「波動関数」こそが電子の真の姿に近いもので、それは点ではなく「確率の雲」のようなものです。この雲が覆う範囲が、電子が存在しうる位置であり、この雲の波動の仕方が、その運動量(おおまかに速度と理解してもよいでしょう)に関係します。

肝心なのはここです。「雲」の形そのものが不確実性を内包しているのです。

  1. もしこの雲の位置を非常に確定させたいなら、それを非常に小さく「押しつぶし」、ほとんど点のようにしなければなりません。しかし、「ルールブック」の数学的計算によれば、このように小さく押しつぶされた「確率の雲」は、その波動の仕方が必然的に極めて混沌として複雑になり、あらゆる種類の運動量を含んでしまいます。そのため、その運動量は非常に不確実になります。

  2. 逆に、もしこの雲の運動量を非常に確定させたい、つまりその波動の仕方を非常に純粋で単一にしたいなら、数学的計算によれば、そのような「雲」は空間的に非常に広がり、遠くまで伸びてしまいます。そのため、その位置は非常に不確実になります。

ご覧の通り、あなたが「第一原理」というルールブックに厳密に従って粒子を記述しようとすると、「位置」と「運動量」という二つの属性は、シーソーの両端のように、一方をしっかりと押さえつける(非常に確定させる)と、もう一方は必然的に高く跳ね上がる(非常に不確実になる)ことがわかります。

したがって、第一原理は不確実性を「理解する」のを助けるものではなく、最も基本的なレベルで私たちに教えてくれるのです。不確実性は私たちの測定技術が劣っているからでも、私たちが理解できていないからでもなく、量子世界における最も根源的な、ルールに組み込まれた基本的な属性なのです。その「ルールブック」が正しいと認める限り、この「不確実性」という現象は必然的で、避けることのできない結論なのです。