簡単に言えば、この二つは一方が「壊す」役割を、もう一方が「築く」役割を担っており、協力し合うことで最大の効果を発揮します。
クリティカルシンキングは、主に「壊す」作業を行います。
それは、私たちが普段「当たり前だ」「みんなそうしている」と思っていることに対して、何度も「なぜ?」と問いかけることです。例えば、誰かがあなたに「この方法が一番だ」と言っても、あなたはすぐに信じ込まず、こう考えを巡らせるでしょう。
- 「本当にこの方法がベストなのか?何か証拠はあるのか?」
- 「どのような条件下でベストなのか?環境が変わっても通用するのか?」
- 「この方法を教えてくれた人は、何か偏見や個人的な利益が絡んでいるのではないか?」
ご覧の通り、クリティカルシンキングはまるで清掃員のように、他者から植え付けられたり、経験から形成されたりした、頼りない「常識」「仮説」「偏見」をすべて取り除いてくれます。それは現状を打破し、足元の土地のどこが固い土で、どこが不安定な砂地なのかをはっきりと見極めさせてくれます。
第一原理は、主に「築く」作業を行います。
地面がクリティカルシンキングによってきれいに片付けられた後、あなたの目の前には最も基本的で核となる「事実」と「法則」だけが残ります。これらが第一原理です。それは、既成の、他者が作ったもの(例えば既製の椅子)を参照するのではなく、最も基本的な材料(例えば木材、釘)と最も基本的な物理法則(例えば力学構造)から思考を始めることを求めます。
イーロン・マスクがロケットを製造しようとした際、彼は「既存のロケットのコストをどうやって少し下げるか」とは考えず、こう問いかけました。
- 「ロケットを作る上で、最も基本的な材料は何だろう?」(アルミニウム合金、チタン、銅、炭素繊維など…)
- 「これらの材料は市場でそれぞれいくらで売られているのか?」
彼が計算したところ、材料費はロケットの総コストのわずか2%に過ぎないことが分かりました。そこで彼は、「ロケットが高価なのは、主に中間工程や既存の生産方法が非効率すぎるためであり、材料そのものが高価なわけではない」という結論に至りました。これこそが、最も根本的な「レンガ」から思考をやり直すことであり、既成の「家」を繕うことではありません。
したがって、この二つは次のように相互補完的な関係にあります。
まず、クリティカルシンキングというハンマーを使って、「常識」「慣例」「権威ある意見」といった、一見堅固に見える壁を打ち壊す必要があります。そうしなければ、あなたの思考はその中に閉じ込められ、最も根底にあるレンガに触れる機会すら得られないでしょう。
壁を打ち壊し、空き地ができた後、第一原理という方法を用いて、最も堅固な地面(基本的な事実)から始め、最も基本的なレンガ(核となる要素)を使って、あなた自身の、おそらくより優れた構造で、より低コストで、より高効率な「家」を再構築するのです。
簡単に言えば、クリティカルシンキングがなければ、目の前の世界は十分良いと感じ、何も変える必要がないと思うため、第一原理を使おうとは全く考えないでしょう。一方、クリティカルシンキングだけがあり、第一原理がなければ、あなたはただあら探しをして不平を言うだけで、建設的な解決策を提示できない「揚げ足取り」になってしまうかもしれません。
ですから、一方が障害を取り除き、もう一方が認識を再構築する、この二つはまさに最高のパートナーなのです。