第一原理は学際的なイノベーションを導くことができるか?

直樹 淳
直樹 淳
Researcher in AI, uses first principles for novel designs.

もちろんです。そして、こう言えるでしょう。第一原理は、破壊的な学際的イノベーションを行う上での、最も根源的で、最も強力な「切り札」であると。

難しく考えるのはやめましょう。子供がレゴブロックで遊ぶ様子を想像してみてください。

ほとんどの人のイノベーションは、「設計図通りにレゴを組み立てる」ようなものです。あなたはスポーツカーの設計図を持ち、私は飛行機の設計図を持っています。いわゆる学際的な協力とは、私が飛行機の翼をあなたのスポーツカーに取り付けて、飛べるかどうか試すようなものかもしれません。これは「類推思考」と呼ばれ、私たちは既存の完成品の枠組みの中で組み合わせを行っているに過ぎません。

しかし、第一原理は全く異なります。それは、すべての完成したレゴモデル(スポーツカーであろうと、飛行機であろうと、城であろうと)を直接すべて分解し、2x2、1x4、車輪付き、透明なものなど、一つ一つの最も基本的なブロックに還元します。そして、この基本的な部品の山を見て自問するのです。「これらの最も基本的なものを使って、一体どんな前代未聞の新しいものを組み立てられるだろうか?」と。

ほら、問題を最も基本的な「ブロック」に分解すると、学問の境界線は消え去ります。

物理学の「ブロック」はエネルギー、力、原子。化学の「ブロック」は分子、元素周期表。コンピュータサイエンスの「ブロック」は0と1、論理ゲート。デザインの「ブロック」は色、形、ユーザーの心理的ニーズです。

トップレベルの学際的イノベーターの頭の中にあるのは、「物理学の知識」や「デザイン学の知識」ではなく、これらの最も根源的な「ブロック」なのです。

典型的な例を挙げましょう。ダイソンの掃除機です。

ダイソン以前は、誰もが「集塵袋」をどう改良するか、ろ過性能を向上させ、詰まりにくくすることばかり考えていました(これは「掃除機」という完成品の枠組みの中で考えることです)。

しかし、ジェームズ・ダイソンが用いたのは第一原理でした。彼が問いかけた根本的な問題は、「なぜ私たちは集塵袋を使うのか?」でした。答えは、空気とゴミを分離するためです。では、「空気とゴミを分離する」というこの行為は、「ろ過」という方法以外に、もっと本質的な方法はないのだろうか?

彼は全く関係のない分野、すなわち工業用製材所からインスピレーションを得ました。工場では「工業用サイクロン」と呼ばれる大型装置が使われており、高速回転によって生じる遠心力で木屑を空気中から振り落としていました。

この「遠心力分離」こそが、「ろ過」よりもさらに根源的な物理原理の「ブロック」なのです。

ダイソンが行ったのは、「工業製造」の分野で見つけたこの「物理ブロック」を「家電」という分野に応用し、集塵袋というものを完全に排除し、サイクロン掃除機を発明したことです。これこそが、第一原理に駆動された見事な学際的イノベーションです。彼は「家電」と「工業」の間で何か協力を行ったわけではなく、直接的に根源的な物理学の原理を適用したのです。

というわけで、まとめると:

第一原理はハンマーのようなものです。それは、異なる学問分野の硬い殻(専門用語、慣習、固定観念)を打ち破り、その中に隠された、すべての学問分野に共通する「基本的なブロック」(例えば、物理法則、数学的論理、人間のニーズ)を見せてくれます。

一度これらの普遍的な基本的なブロックを手にすれば、あなたもはや「プログラマー」でも「デザイナー」でも「エンジニア」でもなく、真の「創造者」となります。あなたは自由にAという学問分野から2つのブロックを取り出し、Bという学問分野から3つのブロックを取り出して、かつてないCを構築することができます。

これこそが学際的イノベーションの真髄です。二つの家をくっつけるのではなく、最も基本的なレンガや瓦を使って、全く新しい神殿を建てることなのです。